コエガタリ

声優ファン歴10年のアラサーが声優さんについて書き殴るブログ

RAMPO in the DARK vol.3 6/26昼公演感想

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少し日が空いてしまったのですが、スマホに感想メモをしっかり残してあり、このままお蔵入りさせるのがもったいなかったので、短いですが記事として感想を残すことにしました。

6/26 12:30の公演のみの感想になります。
出演は立花さん、りょうたくん、渕上さん。
江戸川乱歩の「疑惑」「陰獣」2作の朗読劇で、前者が短編、後者が長編になります。

疑惑

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青空文庫のリンクなので、興味がある方はこちらから読めます

語り手がりょうたくん、聞き手が立花さんで、渕上さんの出番はなし。地の文はなく会話形式で進んでいきます。

5月にあったフォアレーゼンの朗読劇を見てりょうたくんの朗読が大好きになり、足を運んだんですがやっぱりめちゃくちゃ良くて大好きになった。

 

koegatari.hatenadiary.com

 

あらすじをかなり簡単にまとめると、とある日、りょうたくん演じる語り手の父親が、家の庭で頭が割られた状態で死んでいるのが見つかる事件から始まります。最初は、父親が何者かに殺されたものの、今までの父親の素行の悪さから悲しむことができない葛藤を漏らし、思い当たる犯人について思いを巡らせていたのですが、次のシーンから家族の中に犯人がいるのではないかと疑いだし、しまいには自分が家族から疑われていると疑心暗鬼になって、最終的にはそんな疑惑に囚われ精神を病んでしまうものの、思いもよらぬことがきっかけで犯人にいきつく…というお話。

りょうたくん演じる語り手は、神経質な人柄がうかがえる話し方なんだけど、家族への疑惑を持ち始めてからだんだんとヒステリーっぽく声色が尖っていき、精神を病んで一見穏やかに聞こえつつも虚無感が漂うといった全編においてお芝居に対し興奮しまくっていました(歪)。

フロイトの理論を永遠と語るシーンではサイコパスみがある言い回しも良くて、とにかく満足した。ちなみに、フロイトの理論を語る台詞がこちら。

「まあ、あったんだ。ところで、君はフロイドのアンコンシャスというものを知っているかしら。兎も角、簡単に説明するとね、我々の心に絶えず起って来る慾望というものは、その大部分は遂行すいこうされないでほうむられてしまう。あるものは不可能な妄想であったり、あるものは、可能ではあっても社会上禁ぜられた慾望であったりしてね。これらの数知れぬ慾望はどうなるかというと、我々みずから無意識界へ幽囚ゆうしゅうしてしまうのだ。つまり、忘れてしまうのだが。忘れる、ということは、その慾望を全然無くしてしまうのではなくて、我々の心の奥底へとじ込めて、出られなくしたというに過ぎない。だから、僕達の心の底の暗闇には、浮かばれぬ慾望の亡霊が、ウヨウヨしている訳だ。そして少しでも隙があれば飛び出そう、飛び出そうと待構えている。我々が寝ている隙をうかがっては、夢の中へ色々な変装をしてのさばり出す。それが高こうじては、ヒステリーになり気違いにもなる。うまく行って昇華作用を経れば、大芸術ともなり、大事業ともなる。精神分析学の書物を一冊でも読めば、幽囚された慾望というものが、どんなに恐しい力を持っているかに一驚いっきょうを喫きっするだろう。おれは、以前そんな事に興味を持って少しばかり読んだことがある。
 その一派の学説に『物忘れの説』というものがあるのだ。分り切ったことをふと忘れて、どうしても思い出せない、俗に胴忘どうわすれという事があるね。あれが決して偶然でないというのだ。忘れるという以上は、必ずそこに理由がある。何か思い出しては都合の悪い訳があって、知らず知らずその記憶を無意識界へ幽囚しているのだという。いろいろ実例もあるが、たとえばこんな話がある。
 かつてある人が、スイッツルの神経学者ヘラグースという名を忘れて、どうしても思出せなかったが、数時間の後に偶然心にうかんで来た。日頃熟知している名前を、どうして忘れたのかと不思議に思って聯想の順序をたどって見た所、ヘラグース――ヘラバット・バット(浴場)――沐浴もくよく――鉱泉――という風にうかんで来た。そしてやっとなぞが解けた。その人は以前スイッツルで鉱泉浴をしなければならない様な病気に罹かかったことがある。その不愉快な聯想が記憶を妨さまたげていたのだと分った。
 また精神分析学者ジョオンスの実験談にこういうのがある。その人は煙草ずきだったが、こんなに煙草をのんではいけないなと思うと、そのしゅん間かんパイプの行方ゆくえがわからなくなる。いくらさがしても見つからない。そして忘れた時分にヒョイと意外な所から出て来た。それは無意識がパイプを隠したのだ。……何だかお談義みたいになったが、この忘却の心理学が、今度の事件を解決するカギなんだ。
 おれ自身も、実は飛んだことを胴忘れしていたんだ。親父を殺した下手人が、このおれであったということをね……」

引用:疑惑(青空文庫江戸川乱歩 疑惑 (aozora.gr.jp)

これ全部あったかは分からないけど、とにかく長い台詞だと思ったのは確かで、これを客に「聞かせる」のって上手くないとそもそも何を言ってるのか分からなくなるし、頭に入ってこなくなると思う。(ただ、りょうたくんで聞いてもこの話は途中から意味が分からなかった)

原作を読んでもらうと分かる通り、聞き手はあくまで聞き手に徹していて、語り手であるりょうたくんにすべてがかかっていたと言っても過言ではなかったんだけど、語りが上手すぎてずっと引き込まれた。シーンが切り替わるごとにどう変化していくのか毎回楽しみだった。

細かい部分について言及できないのが惜しいんですが、ただ一つ言えるのは鈴木崚汰マジで推せる」ということですね!狂気芝居ありがとうございました!!!

陰獣

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青空文庫のリンクなので、興味がある方はこちらから読めます

語り手(寒川・探偵小説家)が立花さん、話のキーマンである小山田静子を渕上さん、寒川の友人で記者をりょうたくんで、こちらは地の文があり、立花さんが基本喋りっぱなしで、一生分の立花さんボイスを聞いた気がします。

寒川が、小山田静子から大江春泥という探偵小説家から脅迫されており、助けてほしいという申し出から話が始まるんですが、こちらは私の頭だとまとめられないのでWikiか何か読んでください。

原作を読まないまま朗読劇にのぞんだのですが、話を追うのに必死で芝居を楽しむ余裕がないくらい濃厚な話だった。湿度が高くてジメジメした空気感と変態性、真実が明かされず謎のまま終わる後味の悪さ。これが江戸川乱歩の真骨頂かと分からせられました。「人間椅子」と同じ気持ち悪さがありましたね……。

ただ、立花さんの語り口が基本軽く飄々としていたのもあり、その重さが軽減されていたのは、個人的には良かったかもしれないです。

渕上さんはまず着物姿がお美しく、声も素敵だな~と思っていたら、行為中に鞭で打たれるのが好きなマゾヒズムをお持ちな女性で、結構エロティックな台詞があるので、めちゃくちゃドキドキしてしまった。両隣がおそらく渕上さんファンの男性で、ファンの方はどういう心境なのかも気になって余計に気が気じゃなかったですね。

話のインパクトが強かったので、話を知った上でもう一度見てみたい。他のキャストさんだとまたアプローチが違うはずなので、比較したらより面白いだろうと思う。今、まさに記事を書きながら円盤の購入を悩み始めております。私が行った公演が入ってる円盤、立花さんと同じ役を演じてるのが野島さんと佐藤さんとか、確実にお芝居全然違うだろうから聞きごたえ絶対あるよな~!聞きたいな~!!

 

江戸川乱歩の作品な時点で濃い内容になるとは思ってましたが、予想以上にどギツくて大変面白かったです。神田明神ホールという厳かな場所で、かつ会場の内装がとてもオシャレで昭和というかアンティークな家具や小物を使っていて、衣装もこだわりの和装で、目と耳で楽しめる格式高い朗読劇でした。
江戸川乱歩の作品が苦手でなければ、好きなキャストさんが出てたらぜひ行ってみることをおススメします!配信もあるので、まずは配信から見てみるのもアリかと!

こちらの動画で内装と各キャストのお写真があるので、気になる方はどうぞ。

 

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